Bonjour à tous! 渋柿です。
フランスは芸術の国。生活していると、芸術を身近に感じます。街中では年間を通してアートイベントが盛んです。子供に対する芸術教育にも国を挙げて力を入れています。
フランスの各地に設立されているコンセルヴァトワールは公立。音楽・舞踊・演劇を学ぶことできる学校です。子供の習い事としても人気があります。通常の学校が終わってから通います。音楽に関しては放課後に週1〜3回くらい通わなくてはなりません。個人レッスンだけでなく、グループでのソルフェージュやグループレッスンもあるからです。
そして、コンセルヴァトワールの音楽科では専攻できる楽器も豊富。ピアノやヴァイオリンはもちろん、ギター、ハープ、古楽器、オルガン、縦笛、フルート、木管、金管。びっくりするほどたくさんの楽器を格安で学べます。
▼コンセルヴァトワールに興味のある方はこちら。
一口に「コンセルヴァトワール」といっても、幾つかの階層に区分けされていますので要注意です。
プロを目指す人向けのコンセルヴァトワール
まず、最上位にあるのが、conservatoires nationaux supérieurs。音楽に関して言えば、パリとリヨンにあります。日本語ではパリ国立高等音楽院・リヨン国立高等音楽院と言ったりしますね。のだめカンタービレでもお馴染みです。プロを目指す人が、ある程度の年齢になってから受験します。
よく、日本の音楽関係者が卒業後に「パリのコンセルヴァトワールに留学した」「リヨンのコンセルヴァトワールを卒業した」とか言いますけど、このコンセルヴァトワールは、特に断りがなければここのことを指します。
子供から大人まで学べるコンセルヴァトワール CRR・CRD・CRC/CRI
いわゆる、子供の音楽教育はCRR・CRD・CRC/CRIと呼ばれるカテゴリーのコンセルヴァトワールで受けます。子供だけでなく大人も習えます(一部のCRRは年齢制限あり)。このうち、1校あたりの規模が大きいのはCRRです。そしてCRRは進級認定も、CRD・CRC/CRIより厳しめです。
ですから、より、高いレベルを目指す場合はCRRが良いようです。しかし実際には、自宅から通いやすい音楽院を選ぶことが多いです。週に複数回通う必要がありますからね。どんな違いがあるのか、順番に見ていきましょう。
Conservatoires à rayonnement regional(CRR)
ヒエラルキー的にパリ高等音楽院・リヨン高等音楽院の下にあるのが、Conservatoires à rayonnement regional(CRR)。日本語では「地域圏立音楽院」でしょうか。でも、「地方音楽院」と呼んでいるのをよく聞きます。「パリ地方音楽院」とかね。フランス全土に43校あります。
うちの子供が通っているのもこのCRRのカテゴリーに入るコンセルヴァトワールです。
イル・ド・フランス、ラングドック、ブルターニュといった、フランスの「地域圏」を軸に配置されています。パリやリヨンといった都市はもちろんですが、県庁所在地になるような都市で且つ大きめの都市に1校づつあるようなイメージです。
Conservatoire à rayonnement départemental(CRD)
次に、Conservatoire à rayonnement départemental(CRD)。フランス全土に109校あるようです。特に日本語の訳語は聞いたことありませんが、「県立音楽院」とでも言うのでしょうか。フランスには95もの県があるそうですから、ほぼ各県に1校づつの配置ですね。
Conservatoire à rayonnement communal/intercommunal(CRC/CRI)
そして、Conservatoire à rayonnement communal/intercommunal(CRC/CRI)。フランス全土に338校もあるそうです。こちらも、特に日本語の訳語は聞いたことがありませんが、「市町村音楽院」と言うのでしょうか。
CRRとその他のコンセルヴァトワール(CRD/CRC/CRI)との違い
まず、規模です。CRRは生徒数が多く、校舎も大きく、設備も揃っています。
進級認定も厳しめです。私が見ていて思うのは、同じ楽器専攻の第3課程の生徒といっても、CRRとCRCの生徒では、かなり実力が違います。
CRRは規模が大きい分、専攻できる楽器もより種類が多いです。
コンセルヴァトワールで習える楽器はどんなものがあるの?
例えば、パリ地方音楽院(CRR)の例を挙げると、
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ピッコロ、フルート、オーボエ、イングリッシュホルン、クラリネット、バスクラリネット、サックス、ファゴット、バスファゴット、ホルン、トランペット、コルネット、トロンボーン、バストロンボーン、チューバ、サックスホルン、ピアノ、伴奏、オルガン、ハープ、ギター、アコーディオン、パーカッション、マリンバ、、、
クラシックだけではありません。ジャズや現代音楽も習えます。もちろん、校内オーケストラに加入することもできます。
子供がいきなりヴィオラやチェンバロを専攻する、というのも、日本には無い感覚です。
コンセルヴァトワール地域音楽院(CRR)での音楽教育
まず、準備課程があります。cours preparatoire とか cours decouvert と呼ばれます。本科は、第1課程(premier cycle)から第3課程(troisième cycle)まであります。準備課程は必ずしも入る必要はありません。本科の先には、上級過程もあります。
経験者であれば、オーディションを受けて、実力相応の課程・年次から始めます。
第1課程から第3課程までの各課程は、通常3年から4年かけて進級します。進級にあたっては、外部の審査員を含む審査員の前での試験をパスしなくてはなりません。当然、暗譜です。
プレッシャーもかかるし、結構厳しいですよ。その場で発表があり、進級認定されなかった子が涙を流しているのを見たことがあります。
コンセルヴァトワールCRRの恵まれた環境!
それぞれのコンセルヴァトワールで少しづつ違いがあるとは思いますが、私が気づいた点をご紹介しましょう。
まず、たくさんあるレッスン室はピアノが置かれており、防音仕様、ソルフェージュ室もあります。ソルフェージュ室には、ピアノが置かれており、机椅子があります。
校内にはホールがあり、発表会やオーディションを校内で行うことができます。会合もここで行われます。
個人レッスンはもちろん、ソルフェージュレッスンは、ソルフェージュ専門の先生が教えてくれます。個人レッスンは課程によって違いますが、30分から1時間です。ソルフェージュは週1回1時間半のレッスンです。ソルフェージュは宿題も出ますよ。
そして、何と言っても特筆すべきなのは、ピアノ伴奏が必要な楽器には、(希望によって)伴奏専門者に伴奏をつけてもらいながら練習できる、ということです。ピアノ伴奏専門の先生も常駐していますから、追加料金無しで、練習に付き合ってもらえます。これは素晴らしい制度です。
まとめ 贅沢だ!羨ましい〜!!
どうですか!?この恵まれた音楽教育環境。贅沢ですね。学校との両立は厳しいものがありますが、子供のうちからこのような場所で音楽の勉強ができるフランスの子供たちは、羨ましいです!
公営ということで料金も格安ですから、かなり裾野が広いです。フランス海外圏であるアフリカ大陸の東海上に浮かぶ島、レユニオン島にもコンセルヴァトワールCRRがあるのも驚きです。
こうやって、フランス海外圏も含めた国中に文化を根付かせるのがフランスの国策の一つでもあるのですね。どおりで層が厚いわけです。さすが芸術の国。地方財政も厳しい中、無駄だ!と言って切り捨てるようなことはしません。文化にかける情熱が日本とは全く違うと感じます。


A bientôt!