Bonjour à tous! 渋柿です。
フランス語を学習していない人は何のことをいっているのか良くわからないと思います。ごめんなさいね。
今日は、フランス語の(人称)代名詞の話題です。
英語では、it, he, herといった代名詞は必ず前に出てきた何か/誰かを指すか、直後にくる何か/誰かを指しますよね。
例えば、That boy is Bob. He is a teacher. とか、He is Tom. He lives in Tokyo. と使います。
しかし、フランス語では必ずしもそうではありません。これは参考書に書かれていないことが多いです。英語の次にフランス語を学習した人が、英語との類似性に着目してフランス語を勉強していると見落とす視点です。
見落とすというより、使っていた参考書に書かれていないから知らなかった、というだけかもしれません。私もその口です。そして、実際に、現地でその場面に遭遇してみて初めて????と混乱しました。
フランスにきて数日後のエレベーター内の会話でそれは起きた!
フランスに移住してきてわずか数日後のことでした。アパートの住人に会ったら、「こんにちは、4階に引越してきました!」と、とりあえずにこやかに挨拶していました。そして、フランスの人にとってアジア人は全て一緒くたで見分けがつかない、と聞いていたので、「日本人です!」ということも、聞かれるより先に言っていました。
その日の朝も、地上階に降りるためにエレベーターに乗りました。すると、すぐ下の階の住人が乗ってきました。初めてお会いしたので、いつもの通りに挨拶をしました。
すると、そのマダムが一言、
Il est parti?
と聞いてきました。私、????となりましたよ。Pardon?と聞き返しました。するとまた、
Il est parti?
とおっしゃいます。聞き間違ってはいません。
ilというのは、英語で言うところのheであり、ときにはitでもあります。だから、いきなりilと言われて、私はそれが何を/誰を指すのか理解しかねたのです。
ilがもう出発したのか?というような意味です。
私は、大急ぎで考えました。
このマダムがいきなりilというのだから、私も知っている誰かのことをilと言っているのかしら?だとしたら、きっと、このマダムはうちの夫と顔を合わせたことがあって、そうだとすれば、あなたの夫はもう仕事に出かけたの?と聞いているのだろう。それしか考えられない!
と。多分3秒ぐらいの間に頭をフル回転させましたよ。
で、私は
Oui, mon mari travaille maintenant. 「はい、夫はいま働いてます。」と答えました。
これ自体ぎこちないですが、フランスに来たばかりだったので、返事ができただけ上出来です 笑。
すると、そのマダムはキョトン!!!としました。私たちは、エレベーターを出て、アパートの入り口から外へ出たとこで「よい一日を!」と言ってお別れしました。
その後かなりの時間がたって判明
この出来事はずーっと心に残っていました。マダムの反応からすると、ilは私の夫のことを指していたのではありません。なら、誰のこと!?!?
その後、フランス人と関わっているうちに、フランス人はいきなり代名詞を使う、ということが徐々に判明してきました。だとすると、あのときマダムが言ったilとは??私の中で、徐々に答えが見えてきました。
ある日、同じアパートに住む、件のマダムとは別の住人と一緒に、うちのアパートの前の住人のことについて話が及んだときです。いきなり、Il est espagnol.って言いました。話の流れからして、前の住人のことを指しているとしか考えられません。そして、私は前の住人がスペイン人だったということを知っていました。だから、いきなり言われたilは、「前の住人」のことを指しています。
やっとすっきりしました!
あのとき、下の階のマダムが言っていたilも、前の住人のことを指していて、マダムはその人が引っ越して行ったことを知らなかったから、新しい住人である私から挨拶されて「(あれ?)前の住人は出て行ったの?」と私に聞いたのです。きっとそうにちがいない!と思っていましたが、これが正解と確信しました。
だから、私が「はい、夫はいま仕事しています。」と答えたのは、明らかにトンチンカンだったわけです 笑。マダムがキョトンとするはずです。
まとめ あなたの頭の中までわからないわよ!
あー恥ずかしい。でも、渡仏してわずか数日後の出来事ですから、フランス語でコミュニケーションできているだけマシだったとおもいませんか!?
それにしても。会話でいきなり代名詞を使う、ってどういう心境なのでしょうね?
自分の頭に描いている具体的なことや人をいきなり代名詞で言って相手もわかると思っているから、いきなり代名詞を使うのだろうと推測しています。
でも、それって、かなり自己中ではありませんか!?だって、相手がその代名詞で何のことを想起するかなんて、文脈から明らかではない場合以外、わかりゃしないではないですか。仮に自分の意図するものや人が相手には代名詞で伝わらないかもしれない、と思えば、相手がわかるようにいうと思いませんか。つまり、そういう用法は存在しないか、あったとしても淘汰されているのではないでしょうか。
フランス語って、文法規則が多くてガッチガチかと思ったら、こういうところはズル抜けなんですよね。
言語が思考過程を含める人となりを形成するとすれば、、、ということですかね!?
まあ、言語学者でもなんでもない一般人が感じたことなので、参考までにどうぞ。
A bientôt!

